家の相続税評価額の計算方法
1 「家」の相続税評価方法
相続財産にご両親がお住まいになっていた家が含まれているケースは多く、また、相続財産の大部分が不動産という方もいらっしゃると思います。
実家を相続する場合の家の相続税評価方法について説明するとともに、節税の特例等について見ていきます。
不動産資産である「家」の相続税を評価する場合は、土地・家屋を別々の方法で評価します。
⑴ 土地の相続税評価方法
土地の相続税評価は、次のどちらかの方法で行います。
・路線価がある場合は「路線価方式」
・路線価がない場合は「倍率方式」
路線価方式
「路線価方式」は、その土地の面している道路に設定された標準価格(路線価)を基準にして計算します。
路線価は、次の国税庁のWEBページから得ることができます。
参考リンク:国税庁・財産評価基準書|路線価図・評価倍率表
路線価は宅地1㎡あたりの評価額(千円単位)を示したものですので、以下の計算で算出できます。
「土地の評価額」 =「1㎡あたりの路線価」×「敷地面積」
なお、評価額の算出に路線価を使う場合、実際の計算ではその土地の奥行き・間口・形状・角地かどうかなどといった土地固有の条件を考慮して、補正して評価額を算出します。
参考リンク:国税庁・奥行価格補正率表
ご自分で評価額の目安を算出することは可能です。
しかし、相続税申告を行う際には、税理士に相談することをお勧めします。
倍率方式
路線価が設定されていない土地については、倍率方式で評価額を算出します。
倍率方式に用いる倍率を「評価倍率」といい、路線価と同じように、先ほどの国税庁のWEBページから得ることができます。
路線価方式では土地の形状などによって補正しましたが、倍率方式では補正は必要なく、「土地の固定資産税評価額」に「評価倍率」をかけて求めます。
「土地の評価額」 = 「固定資産税評価額×「評価倍率」
なお、固定資産税評価額は、毎年4月頃に届く固定資産税の納税通知書に記載されています。
固定資産税の納税通知書が手元にない場合は、役所で固定資産税評価証明書を取得して確認することもできます。
⑵ 家屋の評価方法
家屋については、「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額となります。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書もしくは役所で取得できる固定資産税評価証明書で確認できます。
⑶ ローンが残っている場合
一般的に、住宅ローンを民間の金融機関等で借りる場合は、団体信用生命保険への加入が条件となります。
団体信用生命保険とは、加入者に死亡または高度障害など万が一のことがあった場合に、残りの住宅ローン全額の完済が保障される制度のことです。
そのため、被相続人が団体信用生命保険に加入していた場合は、住宅ローンは完済されてローンは残らないことになります。
団体信用生命保険に加入していない場合は住宅ローンが残ってしまい、不動産のプラス財産とともに住宅ローンのマイナス財産も相続することになります。
住宅ローンが残っている場合は、「不動産の評価額-住宅ローン残高」が相続税評価額となります。
2 実家にかかる相続税を軽減する方法
⑴ 小規模宅地等の特例を使った相続税の節税
相続財産に実家の不動産が含まれている場合、相続税が高額になってしまうことが多々あります。
しかし、相続人が被相続人と同居していた場合は、実家の不動産の相続税が大きな負担となってしまい、最悪の場合売却しなければならなくなってしまうケースもでてきます。
そのため、相続人が相続する実家に住むことを前提として、相続税が優遇される「小規模宅地等の特例」という特例があります。
この特例を適用するためには満たさなければならない要件はありますが、その要件をクリアして「小規模宅地等の特例」を使うことができれば、実家の土地の相続税評価額を80%減らすことができますので、相続税も大幅に下げることができます。
⑵ 配偶者居住権を使った節税
令和2年4月1日に施行された相続法改正で「配偶者居住権」が認められるようになりました。
相続人に被相続人の配偶者が含まれている場合に設定でき、高齢化社会が進む中で、残された配偶者が住み慣れた住居で継続して生活できるようにするための制度です。
実際に設定する典型的な例としては、「子が建物の所有権を相続」して「配偶者が配偶者居住権を相続」するケースです。
また、配偶者居住権を使うことにより、相続税の節税になる場合もあります。
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